当研究会スタッフが作成に関わった活用事例ガイドブック

空き家等の相談事例の紹介


 空き家等の相談事例の紹介


当研究会のスタッフが対応した事例と対策を紹介します。


空き家が売れないとされた例

 戦前の建築ですが30年ほど前に近代的に改造された民家。市街地に立地し良質な木材を使用しているため買い手は見つかると思われましたが、不動産の権利に問題があり不動産屋から売買困難とされました。

 売買困難な理由は二つでした。1.町丁の境界で公図が混乱していました(当該地番の場所が特定できない)。2.土地は本人が相続しましたが建物所有者が45年前に死亡した祖父の名義のままでした。



対応は以下の通り

  • 公図混乱への対応:市役所に相談して周辺地域の測量と公図の整理を行いました。その際、測量費の一部を相談者が負担することで市と合意、作業を進めました。
  • 相続未登記への対応:当初は、相続人全員の同意を得て登記を更正する予定でしたが、調査により困難な問題が判明しました。ひとつは、2世代前にさかのぼるため相続人が多数になること。もうひとつは、祖父に戦前に養子に出た実子が存在したことです。相続は死亡時の民法に従うため、戦前に養子に出た子どもにも相続権があることが分かりました。
     建物の相続登記は断念していただき、惜しむ中で建物を取り壊して滅失登記(相続人全員の同意は不要です)、その後に土地の売却を行いました。

今後に向けた提言

 建物の取壊しにあたり、貴重な建物部材を生かす道があれば、愛着ある建物を取壊すときの心の痛みが軽減されたと思われました。例えば、山梨県にある「伝匠社」という伝統建築の工務店では、古い民家の建具や古材を保管し、それを別の建物に生かす活動を行っています。県南地域でも、そのような活動を工務店に働きかけることが課題になりそうです。


地域の居場所として補助を得て改修した例

 郊外にある築20年の家。親御さんの逝去に伴い相続しました。親御さんの看護に苦労された経験から、同じ悩みをもつ仲間が集まる居場所として利用していました。
 その活動が少しづつ浸透する中で、地域の方々や子どもたちも集う居場所にできないかという思いを持つようになりました。しかし、費用が乏しい中で迷われていました。



対応は以下の通り

 大学教員である当研究会メンバーがお手伝いし、空き家活用をテーマに財団に活動助成を申請しました。幸いにも採択されて改修費を得ることができました。その後、関係者が一緒に改修プランを検討し、道に開いた窓(写真)を生かした間取りを提案。地元工務店と大学生ボランティアの協力によって安く改修を行うことができました。子ども向けの活動にも大学生ボランティアが参加し、地域の居場所として認知されつつあります。


今後に向けて

 つくば市は、令和元年より地域活性化に役立つ空き家活用等に補助を行う活動を始めています。これを活用することで、居場所づくりがさらに広がっていくのではないでしょうか。


茅葺きの屋根を住民参加で葺き替えた例

 明治期に建築された茅葺民家。一度は町の施設として活用されましたが、その後に家の傷みが進み、所有者は解体を希望していました。しかし、その2年前から茅葺き民家と前面に広がる水田にて、自然と親しむ活動していた有志グループが保存・継承を申出て所有者の方も賛同、地域交流拠点として活用することとなりました。しかし、傷んでいる屋根の茅を最優先で葺き替える必要があり、どうしたらよいか思案していました。



対応は以下の通り

 まず茅が必要になります。グループのメンバーが茅場を調べて集め、2年がかりで延べ約150名のボラティアを得て、屋根の葺き替えを実現しました。さらに、メンバーのひとりが蕎麦屋を開業したいと申し出て、改修費用約470万円を負担して構造補強と内部改修を行いました。改修後は蕎麦屋と都市農村交流拠点として活用されています。
 このように多くの方々の協力が得られたのは、茅葺き民家や美しい水田などの地域資源を活用した活動が行われていたことで、所有者の方や地域住民が「茅葺き民家は貴重な財産だ」とその価値に共感されたことがあります。さらに、ボランティアと協働することで活動の楽しみや喜びを分かち合って頂けたことがポイントだと思います。


今後に向けて

 屋根の茅は、昔は集落の近くに茅場があり、住民が協力して葺き替えていました。しかし、現在では、茅場も職人も限られるため、その維持が難しくなっています。しかし、筑波山のふもと八郷には「やさと茅葺き屋根保存会」が頑張っておられ、高エネ研に茅場が維持されています。応援していきたい活動です。


空き室を学生のシェアハウスとして活用した例

 郊外に立地する古い分譲団地において学生シェアハウスを実践した例です。当研究会のスタッフが手がけた最初の空き家活用の実践です。この団地では高齢化が進んで空き室もみられるようになっていました。そこで団地に活気を取り戻そうと管理組合の皆さんが検討されているときに、当研究会スタッフが応援に入りました。



対応は以下の通り

 団地の空き室を借り上げる組織を立ち上げることにしましたが、そこに団地住民が参加できるように、有限責任事業組合(LLP)と呼ばれる仕組みを用いました、組合員は、大学教員であるスタッフと住民有志です。男子学生用と女子学生用として3DKを2住宅を借り上げてシェアハウスを運営しました。
 参加された団地住民は、大家さん代わりとなってお祭りに学生を誘ったり、逆に、トラブルの防止役として活躍されました。この空き家活用の仕組みは全国的に注目され、その後の類似活動の端緒となりました。 >こちらを参照


今後に向けて

 つくば市にも大学がありますので、学生向けシェアハウスによる空き家活用は可能性がありそうです。それを円滑に運営するのは簡単ではありませんが、チャレンジする価値はあると思われます。


古民家を地域住民のDIYで改修した例

 明治期に建築された農家で、約10年間空き家でした。地域活性化に取り組む地域住民グループが借り受け、都市農村交流施設として活用することになりました。しかし、木材が腐っていたり、柱が沈下しており、大規模な改修工事が必要でしたが、費用をなるべくかけないで改修することが求められました。



対応は以下の通り

 地域住民の有志によるDIYで改修工事を実現しました。改修費は約230万円で、うち7割に助成金を得ることができました。この改修費は、プロの大工が改修した場合の半額程度の金額だそうです。
 ここでは、農閑期に地域の定年退職者が集まって、半年間かけて改修しました。プロの大工はいませんが、地域住民グループの会長のリーダーシップと地域で日曜大工が得意な住民の参加が得られたことで、実現に至りました。